ミスが多いのは「いつから」ですか?

 「予定を忘れる」「書類を失くす」などの「うっかりミス」をしがちな人が、「自分はADHD(注意欠如・多動性障害)ではないか?」と考えることは、昨今よくあることだと思います。

 そのようなときは、「ADHDに違いない」と急いで結論を出そうとするのではなく、

 「自分のミスが多いのは、いつからだったか?」

 を考えることが重要です。

 もし、「子どもの頃からずっとミスが多かったのではなく、ある時期からミスが増え始めた(=その時期以前はあまりミスしなかった)」のであれば、ミスの「後天的な要因」が明確に存在している可能性が高いです。

 例えば、「仕事が忙しくなってからミスが増えた」のであれば、たんに「業務量が多すぎること」がミスの要因かもしれません。「人の悪口ばかり言う同僚と一緒に働き出してからミスが増えた」のであれば、「自分も悪口を言われるのでは?」という不安によって、集中力が一時的に落ちているだけかもしれません。

 「ミスが多いのは、いつからか?」を考えないと、このような「後天的な要因」が明確に存在していても、なかなかそれに気づけないかもしれません。後天的な要因のせいで一時的にミスが増えているだけなのに、「自分は昔からミスばかりしてきた」というふうに、事実をねじ曲げてとらえてしまうこともあるかもしれません。
 ミスが増えているときは悲観的になりやすいので、過去に「ほとんどミスをしていなかった時期」があっても、ついついその事実を振り返らず「自分はどうせミスばっかり」と断定しがちです。だからこそ、そうならないために(言わば「事実を冷静に確かめる」ために)、ミスの多さに悩むときはまず「いつからそうなった?」を考える必要があるのです。

 なお当センターでは、上記の「ミスの後天的な要因」がどのくらいありそうかを考えるお手伝いなども行なっております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。