「がんばりすぎ」について

 発達障害のある人たちの中には、「コミュニケーションが苦手」・「うっかりミスが多い」などの困難を克服するために、ものすごくがんばっている人も多いです。そして、「がんばりすぎてしまう人」も多いです。今回はその「がんばりすぎ」の話をします。

 「がんばりすぎ」の原因はもちろん人それぞれですが、「過去の失敗を激しく後悔しているから、がんばりすぎてしまう」という人は特に多いと思います。例えば、「かつて先輩に失礼な態度をとって怒られた。その後悔があるから、今は誰と話すときも、ものすごく礼儀正しい話し方をする」といったような「がんばりすぎ」は、よく起こりうることです。

 そして、発達障害の特徴が、この「過去の失敗を激しく後悔すること」の原因になっている場合もあります。

 例えば自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人は、「注意の切りかえ」が苦手なことが多いため、「失敗体験の記憶」に注意が向きすぎてひどく後悔する場合も珍しくありません。

 また注意欠如・多動性障害(ADHD)のある人は、頭の中でいろいろな連想が広がりすぎることが多いため、様々な失敗体験を一気に思い出してひどく後悔する場合も珍しくありません。

 そのように人一倍後悔するからこそ、「もう後悔したくない」と人一倍がんばって、めざましい成果をあげられる場合もあります。ただ、がんばりすぎて疲れ果てて、途中でがんばれなくなってしまい、その結果また失敗して後悔する……という悪循環におちいる人も多いです。

 失敗を後悔するのは自然なことだと思います。ただ、上記の特徴などによって知らず知らずのうちに激しすぎる悔やみ方をしないよう、時には「自分の後悔はあまりに激しすぎないか?」と自問してみることも重要です。

 なお当センターでは、失敗を防ぐためのお手伝いももちろん行なっておりますが、上記のような「がんばりすぎ」を防ぐ方法も、必要に応じて提案して参ります。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。