お子さんに知能検査を受けさせたい親御さんへ

 

 

 お子さんに知能検査を受けさせたい親御さんに、お伝えしたいことがあります。
 お子さんが何か問題のある行動をしているとき、

「その問題を解決するために、まずは知能検査を受けさせよう」

 とするのは、いい方法ではないと思います。
 知能検査は、「問題が起こったときに『まず』・『とりあえず』受けてみる」、という使い方をするべきものではありません。

 なぜかというと、知能検査は、「検査を受けた子の心を深く傷つける危険性」を伴うものだからです。
 自分の知能を調べられ、その結果を知らされるということは、たいていの子にとって「怖いこと」です。「自分は何が苦手なのか」などを、はっきりと見せつけられるかもしれないわけですから。
 そのような「怖いこと」を、「まず」・「とりあえず」やらされる――つまり、丁寧な話し合いなどもなく「いきなり」やらされるというのは、子どもにとって強烈な恐怖体験になりかねません。

 そのような体験をさせられたお子さんは、「詳しい説明もなくいきなり検査を受けさせた親」を恨むことがあります。親への怒りによって、問題行動がますます悪化する場合もあります。つまり、「問題を解決するために、とりあえず検査だ」という選択が、問題をもっとこじらせることが珍しくないわけです。

 もしかしたら知能検査には、「問題の原因を明らかにして、スッキリさせてくれるもの」というイメージがあるかもしれません。そして、お子さんの問題にとても苦しんでいる親御さんからすれば、知能検査はその苦しい気持ちをスッキリさせてくれそうな魔法の一手に思えるかもしれません。
 しかし実際はそうではありません。知能検査は、「実施する意義があるかどうかを関係者同士でしっかり話し合って、みんなが心の準備を整えてから実施したときに、問題解決の『手がかりのひとつ』を示しうる道具」という程度のものです。しっかり話し合う余裕もない中で急いで実施しても、苦しさが強まるだけだと思います。

 なお当センターでは、もちろん「検査を実施するべきかどうかの話し合い」も行なっておりますので、その話し合いの場として活用したい方はどうぞお電話くださいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。