「あなたは発達障害では?」と軽々しく言ってはいけない

 今の世の中では、「発達障害」という言葉を知らない人の方が少ないかもしれません。このため、「あなたはもしかしたら発達障害なのでは?」と誰かから言われたことのある人も、誰かにそう言ったことのある人も、割と多いのではないかと思います。

 ただ、「あなたは発達障害ではないかと思う」という言葉は、軽々しく言っていいことではありません。「伝えてあげた方が相手のためでは?」と思って伝える場合でも、「本当に言っていいのかどうか」をよく考えるべきです。

 軽々しく言ってはいけない理由のひとつは、 

 「発達障害かどうかは、そう簡単にわかるものではないから」

 というものです。

 発達障害の特徴があるかどうかは、精神科医や心理士のような専門家でさえ、ある程度は時間をかけて調べなければわかりません。例えば、コミュニケーションが苦手で困っている人がいたとして、その苦手さの主な原因が「発達障害の特徴」なのか、「それとはまったく違う原因(一時的な不安の高まりなど)」なのかは、よく調べてみないとわかりません。頻繁にうっかりミスをする人がいたら、その人は一見するとADHDのように思えるかもしれませんが、実は一時的に抑うつ状態で注意力が落ちているだけかもしれません。

 そして、「発達障害のような印象を与えるけれど、実際は全然違う人」が、誰かから「あなたは発達障害では?」と言われたせいで、「どうやら自分は発達障害らしい」と誤解する場合もあります。そして、コミュニケーションの困難やうっかりミスなどが生じたとき、「これは発達障害のせいなのだ」と決めつけて、実際に潜んでいる「発達障害とは別の原因」に気づけなくなる場合もあります。

 つまり、「あなたは発達障害かも」という言葉が、相手が困っていることの改善に役立たず、それどころか改善を邪魔する場合もあるわけです。

 なお当センターでは、誰かから「あなたは発達障害かも」と言われて混乱している、という人のお悩みの相談も承っております。お困りの際はどうぞお電話くださいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。