知能検査で「能力そのもの」は調べられない

 「自分には何の能力があるのか?」
 「どんな分野なら、自分の能力が発揮できるのか?」

 このようなことが気になっている人は多いと思います。そして昨今は、「知能検査を受ければ、自分にどんな能力があるのかがわかるかもしれない」と考える人も、珍しくないかもしれません。

 ただ、知能検査を受けても、仕事の能力や勉強の能力などの「日常生活で使う能力そのもの」がどのくらいあるかは、わかりません。

 知能検査で調べられるのは、人間の認知機能の特徴(頭の使い方の特徴)ですが、これは「日常生活で使う能力そのもの」とは別物です。それらには以下のような違いがあります。

 知能検査で調べられるもの…能力を発揮するための「要素のひとつ」
 日常生活で使う能力…「いろいろな種類の要素」が組み合わさることで発揮されるもの

 「いろいろな種類の要素」というのは、例えば以下のようなもののことです。

 ・体調の良さ
 ・安定した気分
 ・信頼できる人間関係
 ・継続的なトレーニングができる環境
 (他にもたくさんあります)

 いくら知能検査の結果の点数が高くても、「周りの人からいつも悪口を言われていて、気分も体調も最悪だ」という人が、勉強や仕事で能力を発揮するのは難しいです。逆に、知能検査の結果の点数がそれほど高くなくても、指導者に恵まれたり、家族に応援してもらえたり、毎日コツコツとトレーニングを頑張ったりすることで、優れた能力を発揮できるようになる場合も多いです。

 要するに、人間の能力は知能検査ですぐにわかるような単純なものではない、ということです。検査結果は「能力そのものを表したもの」ではなく、あくまでも「能力について考えるための手がかりのひとつ」だ、ととらえることが重要かと思います。

 なお当センターでは、その単純ではない「能力」をどうすると発揮しやすくなるかについての相談も承っております。単純ではないため、ある程度は時間のかかる相談になることが多いですが、ご関心があればぜひお電話くださいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。