続・知能検査で「能力そのもの」は調べられない

 

 前回、「知能検査を受けても、仕事や勉強などの能力がどのくらいあるかはわからない」という話をしました(https://tokyocare.jp/?p=2441)。仕事や勉強などの能力は、いろいろな要素が絡み合って発揮されるものであって、検査で調べられるのはあくまでその要素の一つに過ぎない、という話でした。

 そして、もし「知能検査で仕事や勉強などの能力そのものについて調べられる」という誤解をしていると、

「知能検査を受けても、検査結果を冷静に受け止められない」

 という問題が起こりやすくなります。

 「知能検査の結果=能力そのものの高さ」と誤解している人は、検査の点数が低めだったとき、当然落ち込みやすくなります。人によっては、「点数が低めだから、自分はこれからどれだけ頑張っても仕事ができないだろう」といったような、とても極端な考え方をしてしまう場合もあります。
 つまり、検査の結果がきっかけとなって、「自分はどうせ頑張っても意味がない」と無気力になってしまう人もいる、ということです。

 繰り返しますが、知能検査の点数の高さと「仕事や勉強などの能力そのものの高さ」は別物です。ただ、それでもまだ、「やっぱり知能検査の点数が高い人は仕事も勉強もすごくできるはずでは?」といったイメージを強く持っている人も少なくないかもしれません。そのような人にとって、知能検査の点数は、「『自分がすぐれた人間なのかどうか』をはっきりと示しているもの」に見えるかもしれません。
 そんなふうに見えてしまっている点数が、もし低かったら? 
 絶望してしまっても不思議ではありません。

 だから、これから知能検査を受けたいと思っている人には特に、「知能検査の結果=能力そのものの高さ」という誤解をしないでいただきたいのです。この誤解が解けていないままで検査を受けると、余計な絶望感に苦しむ危険性があるわけですから。

 なお当センターでは、「既に知能検査を受けたことがあるけれど、その結果に深く落ち込んでいて、どうするといいかわからない」というお悩みの相談も承っております。お困りの際はどうぞお電話くださいませ。

 ※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。