知能検査の結果の報告書は、どう書くべきか

 知能検査の結果の報告書は、「正式な書き方」が明確に決まっているようなものではありません。つまり、「報告書は、必ずこんなふうに書かないといけない」といった厳密なルールはありません。

 ただ、報告書の書き方によって、検査結果の伝わりやすさはかなり変わってきます。
 例えば、報告書の文中に以下の例1のような「大ざっぱな言葉づかい」があったら、検査を受けた人がそれを読んだときに混乱してしまうかもしれません。

例1「Aさんは、視覚的な情報の処理が得意と見受けられます」

 「視覚的な情報の処理が得意」というのは、具体的には、どういうことでしょうか?
 「①見落としをしにくい」という意味でしょうか。「②見たものを正確に記憶するのが得意」という意味でしょうか。または、「③たくさんのものを一気に見るのが得意」という意味でしょうか。
 「視覚的な情報の処理が得意」という大ざっぱな言葉づかいでは、何を意味しているのかがわかりません。①②③の中のどれかなのか、それとも①②③の全部が当てはまるのか、それとも①②③以外の何かなのか……その区別ができません。

 一方、以下の例2のような言葉づかいで書かれていたら、どうでしょうか。

例2「Aさんは、ものを見るときに、細かい部分の特徴を丁寧に見て取ることが得意であるように見受けられます」

 これなら、少なくとも例1よりは、内容が具体的になっていると言えます。「視覚的な情報の処理が得意」という文言よりも、「細かい部分の特徴を丁寧に見て取ることが得意」という文言の方が、指し示している内容がはっきりしていますよね。「Aさんは『細かいところまでしっかりと注目する傾向が強い人』なのだろう」というイメージが、しやすくなるかと思います。

 言いかえると、例2は、解釈の仕方を迷わなくてもいい文言だということです。「これはもしかしたら○○という意味かもしれないし、△△という意味かもしれないし、□□という意味かもしれない……」という「解釈の余地」があまりないのです。知能検査の結果報告として望ましいのは、そのような言葉づかいです。

 報告書の書き方に厳密なルールがないとはいえ、「いろいろな解釈ができてしまう大ざっぱな言葉づかいは避けるべき」ということは、もっと重要視されていいのではないかと思います。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

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