発達障害と、「誰も覚えていない情報」の話

 発達障害があるかどうかを調べるためには、「その障害の特徴が、子どもの頃から表れていたかどうか」を詳しく調べることが必要です。発達障害は生まれつきの特徴ですから、「子どもの頃は〝コミュニケーションの独特さ〟や〝衝動的に動く傾向〟などはなかったけれど、大人になってからそれらが見受けられるようになった」という人は、基本的には発達障害だとは言えません。
 このため、自分が発達障害かどうかを医療機関などで調べてもらうときは、医師や心理士から「子どものときの様子はどうだったか」について、細かく質問されることになります。「〇〇という行動をすることが多かったですか?」「人と関わる場面で△△をしていましたか?」といったような、さまざまな情報が聴取されます。

 そして人によっては、「子どものときに〇〇をしていましたか?」「△△をしていましたか?」などと訊かれても、「あまり覚えていない」「ほとんど忘れてしまった」という場合もあるかと思います。また、その人だけではなく、その人の保護者などもいろいろと忘れてしまっていて、医師や心理士から質問されても十分に答えられない、という場合もあるかと思います。
 つまり、「発達障害があるかどうかを判断するために必要な、〇〇や△△や▢▢……などについての情報を、誰も覚えていない」というケースがありうるわけです。そして、覚えていない情報が多すぎる場合、「発達障害があるかどうか」は、どれほど丁寧に調べようとしてもわかりません。「あるかもしれないし、ないかもしれない。それを判断するための情報が足りない」……となるわけです。

 ただ、発達障害の有無をものすごく厳密に調べることは、「困りごとに対処するために絶対に必要なこと」ではありません。「今ある困りごとの主な原因が、発達障害なのかどうかは、厳密にはわからない。けれど、困りごとへの対処の仕方を丁寧に考えていくことで、だんだんそれがうまくなっていく」という場合もよくあります。

 気分よく暮らしていくためには、「発達障害かどうかの厳密な判定」よりも、「困りごとにうまく対処すること」の方がいっそう重要です。前者がどうしても難しいときは、あまりそれに固執しない方がいいと思います。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

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