発達障害のある人が、苦手なことを克服しようとして「がんばりすぎる」場合も多い、と前々回に述べました(https://tokyocare.jp/?p=2069)。
「がんばりすぎ」におちいる事情は人それぞれですが、「発達障害の特徴などによって、『自分が疲れていること』に気づきにくいから、がんばりすぎる」という人も珍しくありません。
例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴のある人は、「自分の身体や気分の状態に気づくのが苦手」という場合が多いです。このため、身体が疲れていても、気持ちが疲れていても、「疲れているからそろそろ休まないと体力や気力が保たなくなる」と気づけずにがんばりすぎることが多いです。
そのように、もともと自分の疲れに気づきにくい人が、周りの人から「つらいときも前向きにがんばろう!」と励まされて、ますますがんばりすぎてしまう(=適度な休憩を取らない)場合も珍しくありません。
(もちろん、大多数の人はそのような励ましを「よかれと思って」言っていると思いますが、自分の疲れに気づきにくい人への「がんばろう!」がその人をいっそう追い詰めることはよくあるので、注意が必要です)
自分の疲れを無視してひたすらがんばろうとすると、すぐに「がんばりすぎ」になり、すぐに疲れ果ててしまいます。そうなると結局がんばれません。重要なのは、長くがんばり続けるためにこそ「自分の疲れに気づく練習」をしていくことです。また、「つらいときも前向きにがんばることは、とにかくもう絶対に『正しいこと』なのだ」という価値観ばかりにとらわれないよう、その価値観をある程度は疑ってみることも重要なのではないかと思います。
なお当センターでは、上記の「疲れに気づく練習」や「自分の価値観の振り返り」のお手伝いも、もちろん行なっております。お困りの際はどうぞお電話くださいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。