「勉強の苦手さ」と「抽象的なものを理解する力」の関係

 「うちの子は勉強がすごく苦手。何か発達の独特さがあるのかもしれない」と考えている親御さんは、昨今珍しくないと思います。そのような心配があるときは、「もし独特さがあるとしたら、それはどのようなものなのか?」までくわしく考えることが重要です。

 それを考える上で、手がかりとなる観点を紹介します。それは、

 ・「抽象的なものを理解する能力の高さ」は、人によってちがう
 ・この力があまり高くないと、勉強でつまずく場合も多い

 というものです(あくまで、そのような「場合も多い」という話ですが)。

 「抽象的なもの」とは、言いかえると、「姿かたちを持たない概念的なもの」のことです。例えば、「いろいろな法律」や「社会の仕組み」や「化学の法則」などには、当然ですが「姿かたち」がありません。「そういうルールのようなもの」が概念として存在しているだけで、何かの道具や機械や生き物などとは違って「姿かたちを見る・触る」ということはできません。

 そして、「“姿かたちのないもの”の理解が苦手な子」は一定数います。そのような子は、「学校でやるような勉強」に難しさを感じる場合も多いです。「学校でやるような勉強」では、例えば国語・英語の「文法」や算数・数学の「公式」のような、「姿かたちのないもの」の理解が必要な場面が多いからです。

 このような勉強は、「親が掃除や料理をしているのを見て、自分も掃除や料理ができるようになる」というタイプの学びとは質が違います。掃除や料理を見て学ぶときは、「掃除や料理をしている親」という「目に見える姿かたち」がありますが、文法や公式などは概念的な存在であって「姿かたち」はありません。

 このため、「掃除や料理などは問題なくできても、『抽象的なものの理解』は苦手だから、学校の勉強で大きくつまずく」という子もいます。そのような子に「勉強が得意な子がふだん使っている教材」などをいきなり多くやらせようとしても、上手くいかない場合が多いです。

 なお当センターでは、必要に応じて、「抽象的なものの理解がどのくらい苦手か」の振り返りも行なって参ります。お困りの際はどうぞお電話くださいませ。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

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