とある、宿題をやらない男の子の話

 (今回の記事は、前回の記事(https://tokyocare.jp/?p=2099)の続きです。前回と同様に、「個別の事情を考えることの重要性」というテーマを扱っています。ご関心のある方は、ぜひ前回の記事も読んでいただけるとありがたいです。

 なお、タイトルの通り「とある男の子の話」をしていますが、これは筆者が創作した架空のエピソードであり、実在の人物等との関係はありません)

 例えば、宿題を全然やろうとしない中学1年生の男の子がいるとします。

 その男の子は幼稚園くらいの頃から、思いついたことをすぐに言ったりやったりする、ちょっと落ち着きのないところがありました。

 それでも小学生の頃は、宿題をさぼって遊んでしまうことはほとんどありませんでした。たいていは期限までに宿題を提出できていました。また、友達とも仲良くやれていました。

 ただ、その男の子のお父さんとお母さんは、彼の落ち着きのなさが心配で、「中学校はあまり校則の厳しくないところに行かせたい」と考えました。そのためには中学受験が必要なので、彼を塾に通わせました。

 その塾の指導は厳しく、彼は塾の先生から何度も叱られました。問題をちょっと間違えるだけで「やる気がないからそうなるんだ!」と怒鳴られることが何度もありました。

 彼は両親から「合格すれば楽になれるから」と励まされ続けて、なんとか第一志望に合格できました。けれど、その頃にはもう勉強に疲れ果てていました。

 そして中学入学後、まったく宿題をやらなくなりました。友達ともあまり関わろうとせず、ひとりでぼうっと動画ばかり見て過ごすようになりました。

 さて、これを読んでいる皆さん、「自分がこの男の子だったら」と想像してみてください。

 自分がこの男の子だとして、ある日突然周りの人(親や先生や医者や心理士など)から、

 「キミが宿題をやれないのは、キミが発達障害だからかもしれない。

 『衝動性』という発達障害の特性のせいで、つい動画ばかり見たくなってしまうんだ。

 だから、ちゃんと宿題を提出するために、衝動性をコントロールする工夫をしてみよう。例えば、宿題の提出期限を大きく書いて机に貼っておいたり、宿題をやる時間にアラームを鳴らしたりするといいよ」

  ……などと言われたら、どんな気持ちになりますか?

 (この話は次回に続きます)

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

PAGE TOP
PAGE TOP