昨今、自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)という言葉は、世間に広く知られるようになったと思います。このため、「自分は発達障害では?」と思った人が、「発達障害だとしたら、ASDとADHDのどちらなのか?」と気にする場合も多いかもしれません。
この問題について考えるときは、「ASDとADHDの特徴が『どちらもある人』も珍しくはない」という知識が役立ちます。発達障害のある人はこれらの「どちらか」に綺麗に分かれるとは限らず、「どちらにも」当てはまる場合がある、と知っておくことが重要です。
(これらの特徴が両方ある場合、ASDらしい「コミュニケーションの苦手さ」とADHDらしい「じっと落ち着いていることの苦手さ」などがいずれも見受けられる、といった場合が多いです)
もちろん、「ASDまたはADHDのどちらかの特徴だけが強く、もう一方の特徴は強くない」という人もいます。ただ、「テレビやネットで言われているような、ものすごく典型的なASD(またはADHD)」に「そっくりそのまま該当するような人」は、実はほとんどいないかもしれません。
というのも、多くのメディアで説明される「典型的なASD(またはADHD)」というのは、あくまで「ASD(またはADHD)のある人たちの“代表的な特徴だけ”を説明したもの」に過ぎないからです。そしてどんな人にも、「代表的な特徴“以外”の、その人らしさ」があるからです。
人の発達特性とは、「この人は〇〇という特徴がやや強めで、△△という特徴も少しだけあって……」といった、「その人独自の微妙なニュアンス」として存在しているものです。自分の発達特性を理解したい場合は、「自分はASDか、ADHDか」といった「カテゴリ分け」だけではなく、「自分独自の微妙なニュアンス」を振り返ることが重要です。
なお当センターでは、「その人独自のニュアンス」を理解するためのお手伝いも行なっております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。