「言葉にしなくてもわかってくれる」という誤解

ASD(自閉症スペクトラム障害)を持つ人々は、「言葉でくわしく伝えられないことを察するのが苦手」とよく言われます。その苦手さは、「相手の表情などから気持ちを読み取るのが難しい」といった形で表れます。

ASDの特徴がさほど強くなくとも、このような苦手さを持つ方々は少なくありません。その苦手さから、学校・職場・家庭などの様々な場面で、「コミュニケーションが上手くいかない」というトラブルが起こることも多いです。

しかし、「伝える側」の意識次第でトラブルが防げる場合もあります。それは、「言葉にしなくても伝わると決めつけず、大事なことは具体的に説明する」という意識です。「わざわざ言わなくてもわかってくれる、とは限らない」という意識を持つことが重要であるように考えられます。

例えば、「出かけるときは身なりを整える」「目上の人には敬語で話す」といったマナーを守るのが苦手なお子さんがいたとします。その親御さんは、「そんなに常識的なことができないなんて……」と落ち込みがちかもしれません。しかし、その子は「できない」のではなく、「マナーについてくわしく説明してもらえればわかる」という可能性もあるのです。

自分にとっては「言うまでもない」と思えるような事柄が、家族や同僚や後輩にとっては「言われて初めてわかること」かもしれないわけです。このため、何も言わずに「察してほしい」とばかり考えず、自分の思いを言葉にして伝えることが重要です。

もちろん、「伝え方」がわからずに困ってしまうという方も、大勢いらっしゃるかと思います。当センターでは、そのような「伝え方」を一緒に考えるサポートも実施しております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。


※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。