「もしかして私は発達障害?」の前に

お仕事でミスが続いたり、人間関係が上手くいかなくなったりしたとき、「もしかして私は発達障害?」と思う場合もあるかもしれません。

もちろん、実際に発達の偏りが一つの原因となってミスなどが生じる、というケースも多いかと思います。しかし、「発達の偏り“以外”の原因」が大いに影響している場合もあるため、「すべて発達の偏りのせい」と決めつけないことも重要です。

例えば、「20代の頃はスムーズに仕事ができていたけれど、30代になってからミスが増えてしまった人」がいたとします。そのような人が、実は「30代になった頃から明らかに業務量が増えた」などの環境の変化にさらされていた、という場合は珍しくありません。

当たり前の話ですが、仕事の量が増えれば増えるほどミスは生じやすくなります。どんな人であれ「注意力の限界」はあるのですから、あまりに忙しくなれば「この仕事の予定をうっかり忘れていた」などの失敗が起こりやすくなって当然です。たとえ著しい発達の偏りがなくても、です。

このため、「もしかして私は発達障害?」の前に、「今いる環境を見直すこと」も重要です。その見直しを通して「業務量が多すぎる」「手伝ってくれる人が少なすぎる」などの問題に気づけたら、上司への交渉などの「環境への働きかけ」によって状況が改善する場合もあるかもしれません。

なお当センターでは、発達の偏りなどについて調べる検査も実施していますが、そのような検査を通して「偏りがあまり見受けられない部分」を確認することにも重要な意義があるかと思います。例えば「注意力の苦手さはあまり見受けられない」といった結果を通して、上記のように「環境の問題が大きいこと」が示唆される場合などもあるためです。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。