昨今、多くの人たちが、発達障害に関する情報をテレビやネットで見聞きするようになったのではないかと思います。その結果、「自閉症スペクトラム障害(ASD)=コミュニケーションが苦手」、「注意欠如・多動性障害(ADHD)=うっかりミスが多い」といった、大まかなイメージが世間に広まったのではないかと思います。
しかしこのイメージにとらわれて、コミュニケーションが苦手な人を見たらすぐに「ASDだ」、ミスが多い人を見たらすぐに「ADHDだ」と考えるのは、あまりに短絡的です。というのも、「発達障害『以外』の原因によって、コミュニケーションが難しくなったりミスが増えたりすること」も、よくあるからです。
代表的な「他の原因」は、ネガティブな感情です。例えば、人と関わることに強い不安を感じているときは、当然コミュニケーションが上手くできません。また、焦りや怒りなどが強まっているときは当然集中力も落ち、ミスをしやすくなります。
また、体調不良も、よくある「他の原因」です。体の調子が悪いと、疲れることをしたくなくなりますから、その結果としてコミュニケーションに消極的になる・ミス対策を怠る場合が多いです。
このような感情や体調の問題が見過ごされ、「上手くいかないのは“発達障害だから”だ」と誤解されてしまうケースは、珍しくないかもしれません。つまり、「感情や体調のケアができればコミュニーションもミス対策もスムーズに進むのに、本人も周りの人もそのことに気づいていない」というケースです。
生活の中の様々な困難について、すべて「発達障害だから上手くいかないのだ」という理由づけで強引にまとめようとせず、「原因は何なのか?」を慎重に考えることが重要です。
なお当センターでは、この「原因は何なのか?」を一緒に考えていくお手伝いも、もちろん行なっております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。