前回、「感情や体調の問題が、コミュニケーションの困難やミスの増加の原因になりうる」という話をしました(https://tokyocare.jp/?p=1788)。自分の感情や体調などの「発達障害『以外』の原因」が、コミュニケーションの困難やミスに影響する、という話でした。
これに加えて強調したいのが、「発達障害『以外』の原因」として「環境の問題」もある、ということです。つまり、「発達障害の特徴があろうがなかろうが、こんな環境の中にいたら、たいていの人はミスをする/コミュニケーションが難しくなる」という環境は、当然存在するわけです。
例えば、「ものすごく仕事の量が多い部署」という環境では、ミスが増えるのは自然なことです。また、「高圧的な態度の人が多い部署」という環境では、その人たちと上手くコミュニケーションができなくて当然です。
なぜわざわざ、このような当たり前の話をしているかというと、昨今の発達障害ブームの中では「明らかに環境が悪いせいでミスや対人トラブルが増えている状況」でさえ「トラブルの原因は発達障害だ」と見なされる場合がよくあるからです。
例えば、相談に乗ってくれる上司や同僚がいない中で、過剰な量の仕事を押し付けられ、そのせいでミスを繰り返している人がいる。それなのに周囲の人は「ミスが多いのは発達障害だからだ」と決めつけ、劣悪な環境を見直そうとさえしない――そのような事態は珍しくありません。
つまり、何でも発達障害に結びつけて考えると、ストレスフルな環境を改善させるチャンスが失われるわけです。言いかえると、発達障害「だけ」にとらわれないよう気をつけることで、「今の環境の、この部分を変えると上手くいく」というポイントがかなり見えやすくなるかもしれない、ということです。
なお当センターでは、「来談される方々のお悩みの内容に、環境の問題がどの程度影響していそうか」についての振り返りも行なっております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。