不調のときに知能検査を受けてはいけない

 知能検査を受けるときは、ある程度の気力や体力が必要になります。例えば大人向けの知能検査であるWAISⅢを受けるとなると、だいたい2時間以上(※)かけていろいろな問題を解いていくことになるので、だいぶエネルギーが必要です。

(※これはあくまで目安で、個人差はもちろんあります。また、検査の途中に休憩を挟むことも可能です)

 このため、体調が悪いときや、気持ちが不安定になっているときは、知能検査を受けない方がいいです。そのようなときに検査を受けても、「その人の本来の特徴」は正確に調べられないからです。

 例えば、寝不足のときや、充分にごはんを食べられていないときに知能検査を受けても、集中して検査の問題を解くのはかなり難しいです。
 また、気持ちが深く落ち込んでいるときや、強い不安を感じているときなども、人間の集中力や判断力は低下します。
 そのとき知能検査の問題を解いたら、その人の「実力」が発揮できないので、IQなどの検査結果も「実力を反映していないもの」になります。つまり、その検査結果は「その人の本来の特徴を表していないもの」になってしまうわけです。

 このことを知らなければ、以下のような事態におちいる危険性もあります。

 「不調時に知能検査を受ける
 →本来の特徴とは違う結果が出る
 →その結果を『これが本来の特徴だ』と誤解してしまう

 例えば、

 「本来は相手の話を集中して聞く力が高い人が、ものすごく憂鬱なときに検査を受けたために、検査の問題でたくさんの聞き漏らしをした。その検査結果を見て、『僕は人の話を集中して聞く力がすごく低いんだ……』と誤解してしまう」

 といったことが起こるかもしれないわけです。人によっては、何年もこのような誤解をし続けて、「自分の聞く力は別に低くない」ということにずっと気づけなくなる場合もあります。

 不調時は、知能検査を受けるのではなく、まず「不調から回復するための行動(効果的な休息など)」をした方がいいと思います。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

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