(前回の話(https://tokyocare.jp/?p=2311)の続きです)
発達障害の特徴は、現代社会の中では少数派の特徴だと言えるかと思います。言いかえると、定型発達の人の方が発達障害のある人よりも人数が多い、ということです。
このため発達障害のある人は、定型発達の人たちが多い学校や会社の中では、「目立つ」ことがよくあります。例えば学校に通っている子どもたちのほとんど全員が「休み時間に同級生たちとのおしゃべりをしている」とき、発達障害のある子どもが「誰ともしゃべらずにひとりで椅子に座っている(※)」と、その子は当然目立ちますよね。同級生とあまりしゃべらないことが「悪いこと」なのか「正しいこと」なのかをはっきり決めることはできませんが、ひとまず「目立っている」ということは言えそうです。
(※当然ですが、「発達障害のある子どもは全員このような行動をする」というわけではありません。これはあくまでも一例です)
そして、集団の中で目立ってしまうと不利になる、ということもよくあります。簡単に言うと、周りから「みんなと同じ行動をしない変わった人」と思われて、からかわれたりバカにされたりする場合があるわけです。これはもちろん「からかう人やバカにする人が正しい」という話ではありませんが、そのようなことをされて嫌な気分になるのを防ぐためには、「集団の中で目立たないようにする技術」――つまり、多数派に合わせる技術を身につけておくと便利です。
このため、発達障害のある人の「指導者」に当たる人たち(親・先生・先輩・上司など)はたいてい、「多数派に合わせる技術」をしっかり教えようとします。上記の例に即して言えば、「同級生と楽しくおしゃべりするためのコミュニケーションの仕方」などを教えたりするわけです。
そのような指導は、「周りの人からからかわれたりバカにされたりするのを防ぐため」に、つまり「その人を守るため」に行われる場合が多いかと思います。ただし、もしこのとき指導者が、
「いつも多数派に合わせなければいけないわけではありません。生活の中には『多数派に合わせることが必要な場面』と『そうでない場面』があって、『そうでない場面』では、自分の『少数派らしさ』を出してもいいのです」
という趣旨のこともはっきりと伝えなければ、指導を受けた人が、その後の人生で強い不安に苦しむ可能性が高いです。
(この話は次回に続きます)
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。