変わらないことの意義

何気なく日常生活を送っていても、「ちょっとした変化」に出くわすことは頻繁にあります。急に気候が変わったり、学校に新しい先生がやってきたり、昔の友達と再会したりと、生活の中には多くの変化があります。

その中には、ワクワクするような楽しい変化もあれば、強い不安を感じさせる変化もあるかもしれません。「安定した日々を送っていたのに、新しい仕事を突然任された」といった変化に対して、「ずっと変わらない毎日で良かったのに」と感じる方も多いのではないでしょうか。

さらに言えば、「何かが変わること」自体に抵抗感を覚える、という人も大勢いらっしゃいます。ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴を持つ方々は、特にその傾向の目立つ場合が多いです。しかし、「変化が怖い」という気持ちは、ASDの方に限らず誰もが持っていると考えられます。

「これまでの生活が変わる」という場面で、「いい方に変わる」ではなく「悪い方に変わる」と想像してしまうのは、ある意味では仕方のないことかもしれません。「悪い方」を想像しておいた方が、リスクに対処しやすくなる場合もあるためです。しかし、その想像をしすぎると、いつの間にか心が疲れ果ててしまいます。

そのような疲労への対処法として、「変わらないこと」を毎日続けてみる、という方法もあるのではないかと考えられます。具体的には、「何らかの習慣を規則的に続ける」という方法です。家事や筋トレなどの「毎日やっていること」に没頭しているときに、くたびれた気持ちが癒されるという方は珍しくありません。

「変わらない」という安心感を持っているからこそ、生活の変化に立ち向かえる、という場合も多いのではないでしょうか。当センターでも、そのような安心感を増やすお手伝いに努めて参ります。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。


※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。