「自分の感情がよくわからない」という方は、さほど珍しくないように思います。
「何かモヤモヤするけれど、この気持ちは『悲しさ』なのか? 『怒り』なのか?」といったように、感情を見失うことは誰にでも起こりえます。特に、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴を持つ方は、自分の感情の細かいニュアンスに気づくことが苦手な傾向にあると指摘されています。
自分の感情を見失うと、気づかないうちに強い怒りや緊張感などを抱え込んでしまいます。場合によっては、その感情があるときふいに爆発することもあるかもしれません。そうならないためには、「自分がどんなときに、何を感じているか」を意識的に振り返ることが大切です。
そして、振り返る際には、「自分の感情を書き出してみる」という工夫が効果的な場合もあります。具体的には、以下のような手順で「感情の書き出し」を行います。
- 書き出す感情の種類を決める(「楽しさ」「怒り」など)
- 「その感情が湧いてくるような出来事」を、思いつくままに書き出す
- 各々の出来事について、その感情が「どの程度」湧いてくるか、点数をつける
例えば、「近所を散歩すること」の楽しさは10点、「歌を歌うこと」の楽しさは50点、「旅行に出かけること」の楽しさは90点といったように、感情の度合いを数値化していくわけです。
自分の感情を単に「意識する」だけではなく、言葉と数字に書き起こして整理する。そのような練習を通して、「自分はこういうときに少し楽しくなれるんだな」「こういうときにすごくイライラしがちだから注意しよう」と、感情の振り返りが上達しやすくなります。
その「書き出し」を一人で行うのが難しい場合、人と相談しながら書き出すことも重要です。当センターではそのような相談もお受けしておりますので、お困りの際はどうぞお電話下さいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。