人は誰でも失敗する

これまでのエッセイには、生活の中での「上手くいかなさ」への対処法についてまとめたものが多かったかと思います。お仕事・勉強・対人関係などで「上手くいかない」と感じるのは珍しいことではありませんし、対処法次第で上手くいくことも決して珍しくありません。

ただ、「対処すること」と同じくらい、「全部完璧にできなくてもいい、と考えること」も重要です。誰であれ、失敗や心残りを完全になくすことはできません。

しかし、知らず知らず「全部完璧に対処できなければ」と考えてしまっている方も、実は大勢いらっしゃるのではないかと思います。「できた人間」でいなければならないと思い詰め、ちょっとしたミスをしただけで過剰に自分を責めてしまう。心の調子を崩した方の中には、そのような完璧主義に苦しんでいる方も多いのではないでしょうか。

言いかえると、「失敗しないこと」への過剰なこだわりが、人を追いつめる場合もあるということです。「こだわりの強さ」は自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴でもありますが、そのような発達の偏りがさほど強くない人の中にも、同じ苦しみを抱えている方がかなり多いように思います。

ですので、もし生活の中で「上手くいかない」と感じるときが多いなら、「目標が高すぎないか?」と自問することも重要です。「ミスをしない」「みんなと仲良くする」「勉強した分、必ず成果を出す」……これら全て、「高すぎる目標」ではないでしょうか。

「人間は失敗するもの」と考えて、生活の目標を少し下げてみることも、気持ちよく暮らしていく方法の一つだと思います。そのような考え方に即して、仕事の量を減らしたり、試験の勉強を早めに切り上げたりすることが、かえって日々を充実させていく場合もあるかもしれません。

なお当センターでは、そのような「完璧主義をやわらげる練習」も実施しております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。


※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。