身体と心の準備ができていないのに知能検査を受けると、どうなるか

 知能検査は自分の特徴を振り返る手がかりになるものですが、活用の仕方を間違えると人を苦しめるものになってしまいます。

 特に、「『本来の自分の特徴が調べられなかったときの検査結果』を、『正しい結果』だと思い込んでしまうこと」は、様々な苦しみの原因になりえます。

 前々回・前回に説明しましたが(https://tokyocare.jp/?p=2292https://tokyocare.jp/?p=2296)、知能検査の結果は「体調・気分・やる気の高さ」によって、いくらか変わります。体調が悪いとき・激しく落ち込んでいるとき・真剣に取り組む意欲が無いときなどに知能検査を受けると、IQなどの結果の点数は低くなる場合が多いです。

 そのときの点数は、もちろん「その人の本来の特徴を表していないもの」になるわけです。ただ、人によっては、その「本来の特徴を表していないIQなどの数値」を「自分の特徴を正確に表した『正しい』結果」だと誤解してしまう場合もあります。

 その誤解は様々な苦痛をもたらすことが多いです。例えば、「本来は検査結果の数値がもっと高めになるはずの人」が、一時的な不調による低めの数値を見て、「自分は思考力や判断力が低い人間なんだ……」と誤解して過剰に落ち込む場合もあります。
 本人だけではなく親などの関係者も同じように誤解して、「この子は苦手なことが多いから、いろんな手助けをしてあげないと……」と過剰に心配してしまうかもしれません。
 さらに、親などから過剰な(必要以上の)手助けを受けることによって、本人の屈辱感がいっそう強まってしまう場合もあります。

 なお、このような問題が特に起こりやすいのは、体調も気分も不安定な状態の人が「とにかく知能検査を受けなきゃ」と、急いで検査を受けてしまうときです。検査を受けるための身体と心の準備ができていないのに、「〝とにかく〟〝ひとまず〟〝とりあえず〟知能検査だ」、と考えてしまうと、その後の人生が「正しくない検査結果」に振り回されてしまうかもしれないのです。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。

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