発達障害と勉強

以前このエッセイで、「自分の得意/苦手」を知ることが大切、と書きました(https://tokyocare.jp/?p=636)。例えば学校の勉強などに際して、自分の得意なやり方を見つけて取り組むことが大事だ、と。

とはいえ、いつも「得意なこと」だけに取り組めるわけではないのが、日々の生活の難しいところだと思います。例えば、「長時間誰かの話を集中して聴き続けるのが苦手」というお子さんでも、学校に行けば授業を聴かなければいけません。

「話を聴いて覚える/理解する」ことは、決して「誰もが当たり前にできること」ではありません。それが苦手なため、授業の内容や先生の指示が頭に入りにくく、学校生活につまずいてしまう子もいます。

しかし、「目で見て覚える/理解する」のは得意で、「聴くこと」の苦手さをそれで補うのが上手な子もいるのです。

例えば、授業内容の要点を図にまとめて見せてもらったり、そのような「まとめ図」がある参考書を使ったりすることで、「聴く」だけではわかりにくかったところがスムーズに理解できる場合もあります。何度言われても覚えられなかった内容を、図や写真として見せてもらえると忘れにくくなる、ということもあります。

とりわけ、自閉症スペクトラム障害という発達障害を持つお子さん(成人の方も)は、ものごとを頭の中で「映像」として覚えておく傾向が強い、と指摘されています。このため勉強の際も「図」「絵」「写真」などの視覚情報を見せてもらうことで理解が深まりやすくなると考えられています。

「人の話がなかなか聴けない」という理由で「やる気がない」と思われがちなお子さんの中には、「聴く」が苦手で「見る」が得意な子、も大勢いるかもしれません。そのような子は、大事なことを話し言葉ではなく「図」や「メモ」などで伝えてもらうことで、やる気を高めていくかもしれないのです。

当センターでも、「見る」「聴く」の得意・不得意を調べる検査や、その結果に基づいた学習支援等を通して、お子さんのやる気を高めるお手伝いをして参ります。

※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。