「発達障害だから……」という決めつけの問題

近年、発達障害について特集したテレビ番組や、インターネット上の記事などが増えたように思います。自分にも発達障害の特徴がある(あるいは身近にそのような人がいる)という方にとって、そのようなメディアの情報が参考になる場合もあるかと思います。

特に、メディアで紹介される「発達障害を持つ人の体験談」にはわかりやすいものも多いです。それを聞いて「発達障害ってこういう障害なんだ」と納得する場合もあるかもしれません。

ただし、そのような体験談を聞くときは、「発達障害を持つ人全員が、その人と同じ特徴を持っているわけではない」と意識しておくことが重要です。

当たり前の話ですが、人間ひとりひとりの特徴はそれぞれ異なるものです。同じ「発達障害を持つ人」の中でも、ひとりひとりの特徴にははっきりと違いがあります。著名な発達障害当事者の自伝を何冊か読み比べてみても、ある人は作曲などの創作活動が得意、ある人はルーティンワークをこなすのが得意といったように、個性の差が明確にあることがわかります。

もちろん、「発達障害を持つ人は概して○○な傾向にある」と示した研究結果は数多くあります。しかしそれはあくまで「傾向」であって、人によって細かい特徴の違いはあって当然です。その違いに目を向けないでいると、例えば「自分は発達障害だから、どうがんばってもコミュニケーションが全然できないのだ」といった極端な考え方をしてしまいがちです。

大切なのは、「発達障害だから絶対に○○なのだ」と決めつけず、その人ならではの具体的な特徴を知ることです。なお当センターでも、「その人ならではの特徴」をくわしく調べていくお手伝いをしております。お困りの際はどうぞお電話下さいませ。


※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。